移動販売車で食品を販売する際には、必ず保健所での営業許可を取得しなければいけません。
今回は、移動販売車の営業許可を保健所で取得する方法を説明します。
1.営業許可を取得する時の手続きの流れ
まずは、営業許可を取得する時の手続きの大きな流れを説明したいと思います。
後の項目で触れますが、各都道府県、各地域、担当者によって細かいルールの違いがあります。
しかし手続きの大きな流れは下記のような形となることが多いかと思いますので、参考にしてみてください。
1-1.事前相談
最初の事前相談の部分が一番重要かもしれません。
下記のような内容をしっかりと確認しておきましょう。
- どのような商材をどのように販売するのか。
- 自分の移動販売に必要な設備は何か。
- 仕込み場所は別途必要か。
- どの地域に出店するのか。
※特に、営業や販売の流れを細かく聞かれるので、どんな順番で商品を提供するのか箇条書きにして書いて整理しておくと良いです。
営業許可を取得できるように移動販売車の設備を整える必要が出てきますので、分からないことは保健所に自分で相談するか、保健所の営業許可取得に詳しい移動販売車の製作会社に相談するようにしましょう。
移動販売車の製作会社で保健所の許可に詳しい会社は、この辺りをサクサク進めてくれるのでおすすめです。保健所の職員さんは問題がないかどうか判断するのがお仕事ですが、製作会社の方は保健所の許可を取得するのが目的で一緒に考えてくれるので、立場としての意識の方向性が移動販売の事業者と同じなのです。
商材によって設備の基準も変わる可能性があるので、取り扱う商材は明確にしておきましょう。
後から設備の手直しなどが発生すると、時間もお金も余計にかかってしまうので、設備に関しての確認は念入りにすることをおすすめします。
仕込み場所についても後の項目で説明しますが、移動販売車とは別に仕込み場所を手配する必要があるのか、それとも移動販売車の中で仕込みをしても良いのかを確認しましょう。
1-2.申請書類の提出
事前相談で設備について必要なものがわかったら、移動販売車の製作に入るかと思います。
しっかりと設備が整ったら、営業許可申請の書類を提出します。
申請書は各地域のホームページからダウンロードできる場合もあります。
営業許可取得の際に必要な申請書類も各地域によってルールがあります。
主に必要な申請書類は下記の通りですが、申請する地域の保健所で確認をしてください。
また、個人と法人で申請書類が違う場合もありますので注意してください。
- 営業許可申請書
- 営業施設の大要・配置図
- 食品衛生責任者の資格証
- 許可申請手数料
- 登記事項証明書(法人の場合、提出が必要な地域があります)
- 水質検査成績書(井戸水使用の場合)
1-3.移動販売車検査の日程打ち合わせ
完成した移動販売車が、申請内容や営業許可の基準と合致しているか保健所が確認検査をします。
その確認検査のために移動販売車を持ち込む日程などの相談をします。
1-4.移動販売車の確認検査
移動販売車を持ち込み、確認検査を行うので立会いましょう。
基準に適合しない場合は営業許可を取得できません。不適合な部分を改善し、確認検査の日程を再度調整します。
再検査にならないように、最初の事前相談で具体的な確認をしておきましょう。
基準に適合している場合は、「営業許可書交付予定日のお知らせ」を交付してもらえます。
1-5.営業許可証の交付
営業許可書交付予定日になったら、「営業許可書交付予定日のお知らせ」と認印を持参し、保健所に行きましょう。営業許可書を取得することができます。
1-6.営業開始
営業を開始することができます。
保健所の基準を維持できるように、しっかり管理しながら営業していきましょう。
2.移動販売車の設備について
保健所で営業許可を取得するには、移動販売車の設備を保健所の基準に適合するように整えなければいけません。
しかし、保健所の営業許可は全国で統一されたチェック項目があるわけではありません。
各都道府県、各地域によって、条件はバラバラです。
また扱う商材によっても設備の基準が変わる場合もあります。
主な保健所の基準項目は
- 運転席部分と調理販売スペースが完全に仕切られているか
- 給水・排水タンクの容量
- シンクの数
- 販売部分の有無
- 収納ケースの有無
- 換気扇の有無
などです。
営業許可を申請する地域できちんと事前相談をして、基準項目を明確にしてから移動販売車の設備製作に着手するようにしてください。
3.仕込み場所について
食品の移動販売の場合、車内での簡単な調理や盛り付けは許されていますが、基本的には仕込み場所が必要になります。
この仕込み場所についても保健所の許可が必要となります。
また、仕込み場所についても各地域でルールがあるのでしっかり確認してください。
移動販売車の営業許可ばかりに意識が向きがちですが、別に仕込み場所を確保する必要が出てくるケースも多々あります。
そうなると移動販売車とは別に費用や仕込み場所の維持費がかかってきますので、資金計画も考え直す必要が出てきます。
地域によっては、営業許可を取得した移動販売車の中で仕込みを行っても良いというケースもあります。
何度も言いますが、やはり事前相談で詳細な部分を確認してから、資金計画などを考えた方が良いでしょう。
4.出店する地域の営業許可を取る
出店する地域がある程度決まったら、それぞれの地域で営業許可を取得しましょう。
固定型店舗の場合は最寄の保健所で問題ありませんが、移動販売の場合は出店する地域の保健所に申請して営業許可を取得しなければいけません。
※例えば、東京都で営業許可を取得した場合、23区内は営業可能ですが、八王子市と町田市は別途営業許可を取得する必要があります。
このように営業許可を取得した保健所によって適応される地区が決まっていますので、ひとつの保健所で営業許可を取得すれば、複数の地域で営業が可能な場合もあります。
営業許可の取得はきちんと戦略を立てた方が良いでしょう。
5.各都道府県、各地域での確認が必須
冒頭でも説明した通り、各都道府県、各地域、担当者で営業許可の基準が異なります。
例えば届出住所については、自宅の住所であったり出店する住所であったり仕込み場所の住所であったり、各保健所や担当者ごとに見解が違う場合もあります。
先ほど説明した仕込み場所についての見解も地域ごとに違います。
複数の地域での販売を予定している場合は、手間はかかりますが事前にそれぞれの地域の保健所で事前相談をしておきましょう。
A地区では問題なく営業できるけれど、B地区では設備の基準が不適合ということになると、移動販売のメリットである機動力を活かせなくなってしまいます。
ここは面倒がらずに慎重に進めていきましょう。
6.販売する商材で設備基準が変わる
取り扱う商材で設備基準が変わるということも頭に入れておいてください。
例えば、大量に水を使用する商材の場合は、給水・排水タンクの容量の基準が大きくなります。
この給水・排水タンクの容量次第では、軽自動車に積むのが無理なケースも出てくるでしょう。
そうなると車種の見直しが必要になる可能性もあります。
設備基準も地域で異なりますので、事前相談が必須です。
7.イベント出店時は出店要項に注意
保健所の営業許可の取得とは別に、イベント出店時には主催者がアナウンスしている出店要項に注意してください。
例えば、パンやケーキを販売する場合、「菓子製造業許可」が必須という出店要項を定めていることもあります。
該当しそうな商材を扱う場合は、先に取得しておいた方が開業後スムーズにイベントに出店できるでしょう。
下記は東京都の営業許可種類一覧となります。
該当しそうな商材を扱う場合は、事前に取得することをおすすめします。
どの種類に該当するかわからない場合はきちんと確認しておきましょう。
東京都福祉保健局 営業許可種類一覧
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/kyoka/kyoka_0.html
8.まとめ
移動販売車の営業許可を保健所で取得する方法について説明しました。
何度もお伝えしているように、各都道府県、各地域、担当者でルールや基準が異なるため、一概にこれといった基準があるとは言えません。
保健所や、一部の移動販売車の製作会社では事前相談を受け付けてくれるので、移動販売車を手配する前に相談することをおすすめします。
また、イベント出店も移動販売の大きな収入源になるかと思いますので、出店要項についても情報収集をしておくと良いでしょう。
手間のかかる作業ではありますが、ここで手を抜かずしっかりと営業許可を取得し、正式な形で移動販売をスタートできるように頑張りましょう。