実店舗での開業よりも低予算で始められるといわれているのが移動販売です。その手軽さもあり、近年開業する人も増えています。
実店舗が不要な分、開業するためのステップも比較的簡単かもしれませんが、順序を間違えると二度手間になってしまい、時間もお金も余計にかかってしまうこともあります。
今回は、移動販売で開業するためのシンプルな11個の方法をステップ形式で紹介しますので、参考にしてください。
1.移動販売の開業資金(予算)を決める
移動販売に限らず開業・起業を考える場合は予算を決める必要があります。
例えば、実店舗で一般的なカフェを開業する場合は、約20坪の店舗で約1,000万円程度といわれています。
移動販売の開業資金は、約300万円~約500万円程度といわれており、実店舗の半分以下の資金で開業が可能です。
この開業資金の中で大きなウェイトを占めるのが移動販売車の準備や製作・改造などです。
移動販売車の準備や製作・改造については、自作するのか、制作会社に依頼するのかで予算が大きく変わってきます。
また、実店舗の場合は家賃などが発生しますが、移動販売の場合は家賃が発生しません。
しかし、家賃の代わりに移動販売車の維持費が発生します。
移動販売車の維持費は、主に車検や税金、ガソリン代、メンテナンス費用などとなりますが、一般的には店舗やテナントの賃料ほど高額にはならないといわれています。
開業予算の考え方として、開業に必要な資金と当面の運転資金を合わせた資金を準備しておくと良いです。
運転資金については長ければ長いほど運営は楽になりますが、最低半年分の資金があると良いと思います。1年ほどの資金の余裕があるとなお、安定的な運営できます。
かといって、運転資金の準備に時間をかけ過ぎてしまい、なかなか移動販売をスタートしないのも良くないと思います。
スピードも大切ですし、始めてみてからわかることの方が多いので、まずは移動販売をスタートしてから修正を重ねていく方法も視野に入れておきましょう。
もちろん運転資金がなくてジリ貧になってしまうのも困るので、バランスを見極めることも重要です。
2.移動販売の開業資金(予算)を用意する
開業するためにもっとも重要なことは、やはり必要な資金をしっかりと用意することです。
資金を用意する方法はいくつかあります。
2-1.貯金する
例えば起業前に会社員で働いている場合は収入が安定しているので計画的に資金を用意することができます。
また、会社員で働きながら副業をしながら貯金をしている人もいます。
正社員でなくともアルバイトで開業資金を貯金している人もいます。
まずは家賃などの固定費をなるべく減らすことが、貯金への第一歩かもしれません。
2-2.日本製作金融公庫から借りる
日本政策金融公庫とは、日本の政策金融機関です。
中小企業や個人事業主に対しての支援を経営方針に掲げているので、小規模会社の資金不足には強い味方となります。
銀行での融資で断られてしまったり、実績がない起業家は日本政策金融公庫からの融資を検討してみましょう。
金融機関に比べて審査が通りやすいのが日本政策金融公庫の特徴のひとつです。
一度日本政策金融公庫からの審査が通ると実績が残り、今後は銀行などの民間金融機関での審査が通りやすくなるというメリットもあります。
日本政策金融公庫は民間金融機関に比べて低金利なので、まずは日本政策金融公庫からの融資を検討してみてはいかがでしょうか。
経営方針の中にコンサルティング機能の充実を図ることも掲げられているので、事業のアドバイスもしてくれます。
また、返済が厳しくなってしまった場合、減額申請も認めていて返済期間の延長交渉もできます。
2-3.銀行から借りる
銀行から融資を受ける場合は審査が非常に厳しいという特徴があります。
基本的には担保と連帯保証人が必要になります。
大企業などの法人への融資は積極的ですが、小規模企業者には厳しいのが銀行の融資です。
しかし、個人向けの金融商品を取り揃えている銀行もあるので一度相談してみると良いでしょう。
また、銀行ではなく信用金庫から融資を受ける方法もあります。
銀行に比べて、創業間もない企業や中小企業でも融資が受けやすくなっています。
2-4.移動販売車の製作費用をローンやリースで賄う
移動販売車の製作費用に多くの資金が必要なのが移動販売の特徴です。
この費用をどのように捻出、支払うかが悩みどころかと思います。
まず一点目はローンで支払う方法です。
しかし、製作会社で勧められるままにローンを組んでしまうと損をする場合があるので注意が必要です。
なぜなら、どこでローンを組むかで金利が大きく変わるからです。
比較的、銀行でのオートローンの方が金利が低いので、しっかりと情報収集をした上でどこでローンを組むか検討しましょう。
二点目はリースという方法です。
カーリースの一般的なメリットは、税金や自賠責保険、車検などの維持費がリース料金に含まれる点や、固定資産に含まれない点などがあります。
しかし、根本的な話ですが、リース会社によってリースができる商品かどうかが変わるというネックもあります。
基本的には、リースする商品は自分の所有物ではなく、リース会社に所有物ということになります。
車を改造した場合は、返却時に戻す必要があったりしますので、場合によっては移動販売車に対しては不向きかもしれません。
細かい部分はリース会社に相談してみないと何とも言えない部分です。
3.販売する商材を決める
順序として「1.開業予算」から考える方法と「2.販売する商材を決める」が逆になる場合もあります。
「この商材で勝負したい!」という明確な意思がある場合は、準備する設備などがある程度把握できるので、開業予算もより具体的に考えることができます。
商材よりも「とにかく移動販売がやりたい!」という考え方の場合は、開業予算の範囲の中で扱える商材を決めていく必要があります。
開業予算によっては扱えない商材も出てくることでしょう。
商材を決める場合は、より具体的に取り扱いアイテムやメニューを決めておいた方が良いです。
後で出てきますが、保健所で営業許可を取得するというステップがあり、取り扱いアイテムやメニューに必要な設備を移動販売車に設置した上で、営業許可を取得するからです。
後から取り扱いアイテムやメニューを変更や追加していくと、その商材用に設備を追加する必要が出てくるかもしれません。
そうなると、あらためて相談、移動販売車への設備の設置や改造、営業許可申請というフローが発生し、二度手間となります。
場合によっては、購入してしまった移動販売車のキャパに収まらない可能性も出てきます。
このようなことから、取り扱いアイテムやメニューを決める際は、先のことを考えて具体的に考えておいた方が良いでしょう。
また、商材を決める際は同業他社の売り方や人気メニューなどもしっかり調査しておきましょう。最近ではキッチンカーのイベントも多く開催しているので、実際に足を運んで市場調査をすると良いでしょう。
4.店のコンセプトを決める
コンセプトについても販売する商材と同様に、一番最初のステップになる場合もあります。
- コンセプト → 取り扱い商材 → 開業予算
- 取り扱い商材 → コンセプト → 開業予算
という順番になる場合もあります。
取り扱い商材のみに力を入れる方が多いように感じますが、コンセプトやメッセージ、伝えたいこと、こだわりなどを決めるということは非常に重要だと思います。
今の世の中にはモノがたくさん溢れていますので、商材だけで差別化を図るのはなかなか難しい時代です。
移動販売を新たにスタートする人も増え、同じような商材を取り扱う同業他社は数多く存在するでしょう。
その中で生き残る一つの術として、独自のコンセプトを掲げる方法が有効になってくるかと思います。
消費者は、ただ必要なモノを購入するだけでなく、品質や生産者・販売者のバックボーン、メッセージ、ストーリーなどを見ており、そのコンセプトに共感して購入してくれる時代だと思います。
また、共感してくれた消費者はリピーターとしてファンになってくれる確率も高いです。
モノ+コンセプトに共感してもらって購入していただき、リピーターになっていくのが理想的なのではないでしょうか。
このコンセプトをしっかりと考えることが、同業他社との差別化になると思います。
コンセプトを考えると同時に、リピーター確保のための戦略なども事前に練っておきたいところです。
5.出店場所や出店イベントの事前調査をする
次は、出店場所や出店イベントを事前調査しておきましょう。
事前にある程度営業できる場所やイベントを把握しておけば、移動販売をスタートした後にスムーズに営業が開始できます。
また、実際に移動販売をスタートした時をイメージすることができるので、気持ちの余裕もできるのではないでしょうか。
イベントなどは実際に足を運んで営業方法など注意深く観察しておきましょう。
イベントを調査する際は、主催者がアナウンスしている出店要項も注意して見ておいた方が良いです。
例えば、パンやケーキを販売する場合、「菓子製造業許可」が必須という出店要項を定めていることもあります。
該当しそうな商材を扱う場合は、先に取得しておいた方が開業後スムーズにイベントに出店できるでしょう。
出店場所や出店イベントは下記のページにまとめていますので、合わせてご覧ください。
6.保健所の営業許可の調査・相談をする
移動販売車で食品を販売する際には、必ず保健所での営業許可を取得しなければいけません。
各都道府県や各地域、はたまた担当者レベルで細かいルールの違いがありますので、営業を予定している地域の保健所でまずは事前相談をするようにしてください。
複数の地域での営業を考えている場合は、それぞれの地域で相談するようにしてください。
営業許可を取得する地域によって適応される地区が決まっているので、ひとつの保健所で営業許可を取得すれば、複数の地域で営業が可能な場合もあります。
このあたりも相談しておくと効率よく営業許可を取得できるでしょう。
移動販売を考えている方の中で、まずは移動販売車を購入する方も多いと思いますが、可能であれば保健所の事前相談後に購入することをお勧めします。
事前相談である程度のキャパや移動販売車の規模をイメージできるようになるからです。
食品の移動販売の場合、車内での簡単な調理や盛り付けは許されていますが、基本的には仕込み場所が必要になります。
この仕込み場所についても保健所の許可が必要となります。
また、仕込み場所についても各地域でルールがあるのでしっかり確認してください。
移動販売車の営業許可ばかりに意識が向きがちですが、別に仕込み場所を確保する必要が出てくるケースも多々あります。
そうなると移動販売車とは別に費用や仕込み場所の維持費がかかってきますので、資金計画も考え直す必要が出てきます。
地域によっては、営業許可を取得した移動販売車の中で仕込みを行っても良いというケースもあります。
また、前のステップで説明した取り扱い商材についてですが、商材が変われば設備も変わるので、前のステップの段階で明確にしてから相談しましょう。
後から設備の手直しが発生してしまうと、お金も時間も余計にかかってしまいます。設備の確認は念入りにするようにしましょう。
移動販売車の制作を依頼する会社が決まっていれば相談するのも手です。
保健所の営業許可申請に詳しい製作会社もありスムーズに進めてくれます。一緒に考えてくれる製作会社もあるのでお勧めです。
7.移動販売車を準備する
保健所での事前相談や製作会社での相談で必要な設備などが明確になったら、移動販売車を準備しましょう。
保健所の営業許可申請を製作会社に相談している場合は、そのまま移動販売車の手配や製作にスムーズに進めるでしょう。
製作会社に相談していない場合も、保健所の事前相談の内容を製作会社に伝えて移動販売車を準備することをお勧めします。
製作会社は複数の移動販売車を販売していますし、保健所の営業許可申請のノウハウも持っています。
いずれにせよ、移動販売車製作のプロに依頼することがお勧めです。
8.移動販売車の製作や改造をする
「5.保健所の営業許可の調査・相談をする」と「6.移動販売車を準備する」のステップで製作会社に相談している場合はそのまま製作や改造を依頼する流れになるでしょう。
製作会社に依頼しない場合は自作で製作・改造をすることになるかと思います。
自作の場合は車検についても注意が必要です。
改造することで車検で登録している内容に変更が生じる場合は構造変更申請が必要になってきます。
また、車検対策として、移動販売車が該当する8ナンバーの取得をするという手もあります。
車検のことも含め、やはり制作会社に依頼すると手間は大幅にカットできるかと思います。
自作で進めていきたい方はこちらの記事も参考にしてみてください。
移動販売車を自作(DIY)する時に注意するポイント8つ
また、保健所の営業許可や車検ばかりに気をとられないようにしましょう。
これから飲食の販売を行うわけですから、看板や広告、チラシなど販促ツールの製作も忘れないようにしてください。
営業開始までスピーディーに進めたい方は、移動販売車の製作や改造、保健所の営業許可申請や車検などについては製作会社に頼る方が良いかもしれません。
その間、店の営業方針や戦略の策定、販促ツール製作などに時間を割けるので効率が良いと思います。
9.保健所の営業許可を取得する
「5.保健所の営業許可の調査・相談をする」で確認した内容に沿って移動販売車を製作したら、保健所の営業許可を申請しましょう。
大きな流れとして
- 申請書類の提出
- 移動販売車検査の日程打ち合わせ
- 移動販売車の確認検査
- 営業許可証の交付
となります。
製作会社に依頼している場合は、保健所への申請もセットで対応してくれる会社もありますので活用しましょう。
自作の場合は、保健所への申請を自分で行います。
先ほども説明した通り、営業する地域が決まっていれば、それぞれの地域で営業許可を取得するようにしましょう。
10.食材などを仕入れる
保健所の営業許可が取得できれば、あとは移動販売を開始するだけです。
食材や備品などを仕入れて、一度販売シミュレーションを行い不足しているものがないか確認しておきましょう。
仕入れ業者選びも慎重に行いましょう。
食材によっては仕入れ業者によって味が変わってしまうこともあります。
仕入れ価格を抑えるために途中で業者を変えたことで、味が変わってしまいお客様が離れてしまうということもあります。
長い目で見て仕入れ価格と味のバランスを慎重に判断した方が良いでしょう。
移動販売を開始する前に、いくつかの仕入れ業者を試すことができれば良いかもしれません。
仕入れ業者とは長い付き合いになることが多いです。
仕込み場所から遠いと送料も余計にかかってしまいます。極力近い距離の方が良いかもしれません。
また、自分の店のコンセプトに合った食材を取り扱っているかなど、相性の良い業者を慎重に選ぶようにしましょう。
11.移動販売を開始して経験を積み上げる。
いよいよ移動販売のスタートです。
事前に調査した出店場所やイベントなどに出店し経験を積んでいきましょう。
実際に移動販売をスタートしてみると、全く予想していなかったことなど様々な経験ができるかと思います。
周りの動きや人気メニュー、人気店の売り方やお客さんの動向など注意深く観察することも忘れないでください。
トライ&エラーを繰り返して、たくさんのファンが付くように頑張っていきましょう。
また、どのような商売にも共通して言えることですが、仲間や横のつながりを作ることは非常に大切です。
移動販売をする上でも、情報交換ができる仲間がいることはとても大きいので、周りとのコミュニケーションや助け合いの精神は忘れない方が良いかもしれません。
12.まとめ
今回は移動販売で開業するためのシンプルな11ステップということで、あくまでも大まかな項目として11ステップをご紹介しました。
細かい準備はまだまだあるかとは思いますが、冒頭でもお伝えした通りまずは営業をスタートしてみることも大切です。
入念な準備はもちろん大切です。しかし準備に時間をかけ過ぎてなかなか営業のスタートを切れないのは良くないかと思います。
思っていた通りにならないことの方が多いかもしれませんので、その都度すみやかに修正をして改善していく方が良いのではないでしょうか。
修正が発生することを想定して営業していく心構えが大切です。
入念な準備と思い切りの良さのバランスに注意して、まずは移動販売の営業をスタートさせましょう。
参考サイト
今回の記事を作るにあたっていくつかの記事を参考にさせていただきましたのでご紹介させていただきます。
はじめてのキッチンカー(移動販売)さんの「キッチンカー(移動販売)を開業する11step!(完全保存版)」です。当メディアの記事と合わせて参考にしていただければと思います。